命題を、話し手として発言するときには、「何の話をしているのか」ということを 明言したいこともあります。 さっき会った人についての話とか、遠くの天体の話とか、いまの市場経済のこととか、架空の物語とか、 いろいろな話題がありえますね。 このような「話題として想定されている範囲」というのは、「議論領域」とか「談話宇宙」などと呼ばれることもあります。 この講座では「議論領域」と呼ぶことにしましょう。
命題の議論領域に関して、何かを明言したいときには、ロジバンでは冠頭(かんとう、 {brili'e})という構造で表現します。 冠頭は、名辞(めいじ、 {sumsmi})というものを並べる形で、命題の前に出てきます。 今まで勉強してきた「項」というのも、名辞の一種です。 そのほか、「項に項のタグが付いたもの」も、1つの名辞となります。 更に、項を省略した「項のタグだけ」でも、名辞となります。
冠頭を使った表現の例を挙げてみましょう。
lo'e xanto zo'u lo nazbi ku clani
これは、「ゾウは鼻が長い」という意味になる1つの文です。 この文は、冠頭と命題が並んだ形になっています。
冠頭 : lo'e xanto zo'u 「ゾウは」
命題 : lo nazbi ku clani 「鼻が長い」
このように、命題の前に冠頭を言っておくことによって、「ゾウについての話ですよ」と予告することができます。 このような表現を、自然言語では「題目部」と言うこともありますが、 題目を提示するのもロジバンの冠頭の役割の1つです。
冠頭には、名辞を何個並べても良いのですが、この文では1つだけで、 {lo'e xanto} 「ゾウ」という部分が冠頭の名辞です。 {lo'e} という機能語はLE類の単語で、「典型的なもの」という項を作る働きがあります。 {xanto} は「ゾウ」という意味の内容語単語です。 {lo'e xanto} で「ゾウであるものの典型」という意味の項となります。
{lo'e xanto} の後に出てくる {zo'u} というのは、「この文の冠頭はここまでだ」というしるしになる機能語です。
この命題の述語は {clani} 「長い」という内容語単語です。 この命題の項は1つだけで {lo nazbi ku} 「鼻が」となっています。