冠頭の省略

Youtube : 第13回、 16分27秒から

命題の中で束縛変項の出てくる順番が、冠頭で出てくる順番と同じであれば、冠頭の束縛変項を省略しても、同じ意味の文を作ることができます。 先ほどの {bu'u ti ro da poi xanto ku'o su'o de zo'u de da ponse} 「ここではどのゾウにも飼い主がいる」という文では、冠頭と命題で {da} と {de} の順番が逆になっているので、冠頭を省略できません。

この命題の形をちょっと変えてみましょう。

bu'u ti ro da poi xanto ku'o su'o de zo'u da de se ponse

この命題 {da de se ponse} では、 {se ponse} という部分が述語になります。 この述語の最初の {se} というのはSE類の機能語です。 これについては、第10回でお話ししました。 内容語単語で定義される、1番めと2番めの項の役割の順番を、入れ替えるのでしたね。 {da de se ponse} で、 「{da} の指す対象を {de} の指す対象が所有する」ということです。 {da} と {de} の順番が入れ替わっただけで、さきほどの {de da ponse} という命題と同じ意味になっています。 この命題を使った表現では、冠頭と命題の中で {da} と {de} の出てくる順番が同じになっています。 この場合は、冠頭の {da} や {de} を省略しても、同じ意味の文を作ることができます。

bu'u ti zo'u ro da poi xanto ku'o su'o de se ponse

冠頭は {bu'u ti zo'u} 「ここでは」だけで、あとは命題で「どのゾウもだれかが 所有する」という意味になります。 この文全体は、「ここではどのゾウにも飼い主がいる」という意味になります。

実は、この文には、さらに省略できる部分があります。 まず、束縛変項に付く数が {su'o} である場合に限って、この {su'o} を省略することがあります。 つまり、「束縛変項なのに数が付いていない」表現が出てきたら、この束縛変項には {su'o} が付いているものと見なされます。 ですから、 {su'o de} は、単なる {de} に言い換えられます。

それから、 {ro da poi xanto ku'o} 「どのゾウも」つまり「ゾウであるもの全てについて」という長い項ですが、 これは {ro xanto} と言い換えても、同じ意味の項になります。 {ro da poi xanto ku'o} のように、「数 da poi 述語」という形の項は全て、「数 述語」という形に言い換えられるわけです。 ただし、この形で使われる数は、 {su'o} であっても、省略できませんよ。 この「数 述語」という形は、これで1つの項になりますから、必要であれば、 {ro xanto ku} というように、最後を {ku} という機能語で区切ります。

こうして、さきほどの文は

bu'u ti zo'u ro xanto de se ponse

と言い換えられます。 この文では、 {ro xanto} の後に別の項 {de} が出てくるので、 {ro xanto ku} の {ku} を省略できます。

この文は全体として、「ここではどのゾウもだれかが所有する」つまり「ここではどのゾウにも飼い主がいる」という意味になります。