第3回 mi cinmo ma : わたしはどんな気持ちかな

目次

気持ちの表現
発音 : ai ei oi au

気持ちの表現

Youtube : 第3回、 最初から

ロジバンの文となれる表現の一種として、「呼びかけや気持ちの表現」があるということを、前回勉強しました。 今回は、そのうちの「気持ちのあらわし方」を考えてみましょう。

ロジバンには、話し手の気持ちをあらわす単語がたくさんあります。 そういう単語はほとんど、UI類と呼ばれる品詞に属していて、文法上の振る舞いも同じです。 前回、発音練習で触れた10個の単語 {.iu} {.io} {.ia} {.ie} {.ii} {.ui} {.ue} {.ua} {.uo} {.uu} も、UI類に属しています。

UI類の単語には、

  1. 単独で文となることができる

  2. 「どんな文のどの単語の間に入れても良い」という、文法的に非常に自由な性質があり、その文についての、話し手の気持ちをあらわす

という特徴があります。

文法上、UI類が他の単語と共に使われる場合には、直前の単語を修飾すると見なされます。 ただ、人が普通に話をするときは、文法上の修飾の形にとらわれずに、自分の気持ちを表現したいこともありますね。 そういうことを考慮して、「UI類の意味上の修飾関係は、文法上の修飾関係と食い違っていても構わない」ということになっています。

UI類が文の最初に置かれた場合は、その文全体を修飾すると見なされます。 今回は、この「文の最初に置かれる場合の意味」について考えてみましょう。 例えば、

do ti mi dunda

という文を考えます。 この文は、文法上は「命題」と見なされる文ですが、「命題」の詳しい構造は、次回お話ししますから、今はわからなくてもいいですよ。

この文全体の意味は「あなたがこれをわたしに与える」というものです。 さあ、この文をUI類で修飾すると、どうなるでしょうか?

まず、 「喜び」という意味のUI類の単語 {.ui} を文の最初におくと、

.ui do ti mi dunda

となります。 この {.ui} は、 {do ti mi dunda} 「あなたがこれをわたしに与える」という文を修飾して、「話し手の喜び」という意味を与えます。 ですから、この文全体は「わーい、あなたがこれをわたしにくれて、うれしい」という意味になります。

この「喜び」をあらわす {.ui} の代わりに、UI類の他の単語を入れると、どんな意味になるでしょうか。 いくつかやってみましょう。

「寛容の精神、許容する気持ち」をあらわすUI類の単語 {.o'o} を使うと、

.o'o do ti mi dunda

「しかたない、受け取ってやろう」という意味になります。

UI類の中には、修飾している文の内容が実現していないことを示唆するものもあります。 いまの例文に 「してください」と「要請する気持ち」をあらわすUI類の単語、 {.e'o} を使うと

.e'o do ti mi dunda

「あなたがこれをわたしにください」と頼む意味になります。 頼んでいるということは、「実際にはまだもらっていない」はずですね。

さて、UI類の単語は、直前の単語や文全体を修飾する働きがありますが、 UI類の単語を修飾することができる単語も、いくつかあります。

まず、UI類自体の中にも、 他のUI類の後につくと、意味合いを少し変えるという働きをする単語があります。 UI類の単語は、意味の違いによって、さらに細かく分類されていまして、それは、 UI1類、UI2類…というように、番号を付けて区別されます。 番号が違っても、文法上の役割は同じです。

ここまでの例に出てきたUI類の単語は、UI1類に属するのですが、これからご紹介するUI5類に属する単語は、他のUI類の単語のあとに置かれると、そのUI類の意味合いを少し変化させます。 例えば {dai} という単語はUI5類に属していて、「話し手の共感する気持ち」をあらわすものですが、これを他のUI類、例えば、「話し手が誇らしく思う気持ち」をあらわす {.o'a} につけて、 {.o'a dai} とすると、 「相手が誇らしく思う気持ちに共感する」という意味に変わります。 「誇らしいですね」という感じですね。 これを {do ti mi dunda} につけると

.o'a dai do ti mi dunda

「あなたはこれをわたしにくれて、誇らしいですね」といった意味合いになります。 よく、書物の最初のところに「愛する〜に捧げる」と書いてあることがありますが、そんなとき、そこに書かれている人が作者に対してこう言うかもしれません。

UI類とは別の品詞に属する単語で、 {nai} という、否定をあらわすものがあります。

注記

{nai} はNAI類に属するのですが、ロジバン文法の改良案として、NAI類をUI類に統合することも提案されています (zasni gerna cenba vreji (英語))

{nai} がUI類に付く場合の意味については、第14回でもう少し詳しくお話しします。

{nai} をUI類の単語のあとにつけると、もとの意味と正反対の気持ちをあらわす表現になります。 例えば、「喜び」をあらわす {.ui} に {nai} を付けて、 {.uinai} と言うと、「話し手の悲しみ」をあらわすことになります。 今の例文に {.uinai} をつけると

.uinai do ti mi dunda

「ああ、あなたがこれをわたしによこすなんて!ううっ」と悲しんでいる意味になります。 突然、離婚届の用紙を渡されて、そこに相手の署名がしてあるのを見たりすると、そう思うことがあるかもしれません。

ほかに、UI類を修飾するためにあるような単語がいくつかありまして、そういう単語はCAI類という品詞に属しています。 CAI類の単語も、実は単独で文になることができる、話し手の気持ちをあらわす単語です。 少し、例を出してみましょう。 {ru'e} という、CAI類に属する単語があります。 {ru'e} は「気持ちの強さが弱い」ことをあらわします。 これを例えば、「こわい」という気持ちをあらわすUI類の単語 {.ii} の後につけると {.iiru'e} となりますが、この表現は「ちょっと怖い」という意味になります。 これを {do ti mi dunda} という文の最初にいれると、

.iiru'e do ti mi dunda

「あなたがこれをわたしにくれるなんて、ちょっとこわい」 といった意味になります。 けちだと思われている人が、突然気前良くおごってくれたりすると、「何か企んでるんじゃないか、ちょっと怖い」と思われることもあるでしょうね。

{ru'e} を単独で文として使うと、「話し手の何らかの気持ちが弱い」という漠然とした意味になります。

相手の気持ちを尋ねる単語もあります。それは {pei} という単語で、これもCAI類に属しています。 これをUI類の単語、例えば、「話し手の、悔やんでいる、悪かった、という気持ち」をあらわす {.u'u} の後につけて、 {.u'upei} というと、「悪かったと思いますか?」と相手に尋ねる意味になります。 これを {do ti mi dunda} という文の最初にいれると、

.u'upei do ti mi dunda

「これをわたしによこして、悪かったと思ってる?」と尋ねていることになります。

そして、 このように尋ねられた場合の返事としては、UI類やCAI類を文として使うことができます。 {.u'u} と返事をすれば、「悪かった、ごめんなさい」ということですね。 反対に、 {.u'unai} というと、それと正反対の気持ち、つまり「これでよかった、まったく悔やんでいない」という返事になります。 CAI類を使って、例えば {ru'e} と返事をすると、これは「弱い気持ち」をあらわす単語ですから、「ちょっと後悔している」ということになります。