このページの内容は guskant の当時の見解に基づき、ロジバン言語計画委員会の公式見解と異なります。公式見解については、 guskant による
gadri の論理学的観点からの解説をご参照ください。
変項と定項
束縛変項 bound variable ではない変項を 自由変項 free variable と呼びます。
自由変項は量化されていないので、議論領域も決まっていません。
自由変項は、何か代入されるのを待っている項です。
つまり、自由変項を使った命題は、その自由変項に、どの議論領域のどの項を代入するかによって、真理値が決まります。
定項 constant というのは、議論領域を決めた上で、その中の特定の対象を指す (specific) 項です。
述語論理では、定項 c について以下のような論理式が、公理または定理となります(どちらになるかは公理系の取り方に依ります)。
F(c) ⇒ ∃x F(x)
among の理論でも同様です。
F(c) ⇒ [∀Y: Y among c] c among Y ∧ ∃X FX
つまり、定項は {su'o da} (議論領域の中で個として存在する)という意味を含んでいます。
従って、 {zo'e} を定項と決めてしまうと、以下のような問題が起こります。
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問題点1.
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定項は「個」ですから、 {zo'e} を定項と決めてしまうと、
{lo PA broda} =ca'e {zo'e noi ke'a broda gi'e zilkancu li PA lo broda}
が distributive/collective について不定な群れを表すことができなくなります。
# 個体定項 (individual constant) ではなく、複数定項 (plural constant) というものを考慮することも可能ですが、 among 理論では採用されていません。 また、それが collective な群れしか指さないとしたら、 問題点1は残ります。
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問題点2.
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定項は「議論領域の中に存在する」ので、 {zo'e} を定項と決めてしまうと、
{lo no broda} =ca'e {zo'e noi ke'a broda gi'e zilkancu li no lo broda}
という項が意味をなさなくなります。
これでは何のために xorlo を導入したのかわかりません。
gadri からデフォルトの量化を取り除くという xorlo の大原則に従うなら、 {zo'e} は自由変項(何も指さない unspecific)である必要があります。
{zo'e} は自由変項ですから、「何か代入されるのを待っている項」です。 したがって、 話し手が {zo'e} に定項を代入することはできます。
ただし、代入した時点で、何らかの議論領域を固定したことになります。
{zo'e} を含む命題の真理値が文脈に依存する
というのは、つまり、
{zo'e} を含む命題の真理値が、その {zo'e} に代入される定項に依存し、その定項は議論領域に依存し、その議論領域は文脈に依存する
ということです。
ロジバンの文脈依存という側面は、非論理的なのでもなく、自然言語に迎合したものでもなく、純粋に論理学の範疇で説明できることです。
話し手は、{zo'e} に定項を代入しているかどうかを明言する必要はありませんが、
明言したい場合は以下のように、必要条件(十分条件ではないけれども)を {noi} で追記する方法があります。
{zo'e noi pa da zo'u da me ke'a ku'o}
また、話し手がそれを明言していなくても、 xu で質問してみれば、その回答によって明らかになる場合があります。
質問: {xu zo'e [noi ke'a broda cu] brode}
回答1. {go'i}
回答2. {na go'i}
回答3. {na'i}
回答1 と 回答2 の場合は、自由変項 {zo'e} に何らかの定項が代入されている
*脚注ことがわかります。
回答3の場合は、依然として {zo'e} に定項が代入されているかどうかが不明です。
*脚注:
あるいは、 among の理論も考慮すれば、 quantified plural variable (束縛複数変項) になっている。 詳しくは
変項と定項 その3 を参照。 (2014-01-26 追記)