第14回 nu natfe : 否定

目次

nai
to'e
na'e
na ku
発音 : vb bv

nai

Youtube : 第14回、 最初から

否定と言っても、いろんな種類の否定があります。 1つずつ、考えていきましょう。

まず {nai} という機能語があります。 これは否定をあらわす機能語の一種です。 {nai} は、この講座の第3回でもご紹介しました。 例えば {.ui} というUI類の単語が「喜びの気持ち」をあらわすのに対して、これに {nai} を付けた {.uinai} という表現は、悲しみの気持ちをあらわすのでしたね。 このように、 {nai} は、気持ちをあらわすUI類の単語の直後に付くと、もとの気持ちと正反対の気持ちの表現となります。

このように「正反対の意味を作る」というのは、否定表現の一種です。 「正反対」と言っても、どういう尺度で正反対なのかということは、元の単語からは必ずしも明らかではありません。 例えば {.i'o} というUI類の単語は、「褒める気持ち、素晴らしさに感謝したい気持ち」をあらわします。 {i'onai} という表現は、 {i'o} の正反対の意味になるのですが、 褒める気持ちの正反対の意味とは、一体何でしょうか。 考えようによっては、「ひどいものだとけなす気持ち」をあらわすのではないかと思われるかもしれません。 ところが、ロジバンで実際に定義されている {.i'onai} の意味は「うらやましい」と嫉妬する気持ちです。 つまり、 {.i'o} - {.i'onai} という正反対の気持ちの組は、対象の評価について正反対なのではなく、 対象の素晴らしさに対する話し手の気の持ちようが正反対なのです。

このように、「正反対」と言っても、どういう尺度で正反対なのかは、元の単語の定義だけからはわからないこともあります。 そのため、UI類の単語のうち、「正反対」という意味がありうるような単語については、 もとのUI類の単語と、それに {nai} が付いた表現とを対(つい)にして、その両方に定義が与えられています。 例えば {.i'o} と {.i'onai} は、「褒める - 羨む」という対になっています。

このように、UI類と、それに {nai} が付いた表現との対が決まれば、 その尺度での気持ちの強さの違いを、CAI類で段階を付けることによってあらわすことが可能になります。 「褒める」でも「羨む」でもない、どちらとも言えない気持ちは {.i'ocu'i} とあらわします。 この {cu'i} というのは、尺度の中間、「どちらでもない」という気持ちをあらわすCAI類の単語です。ほかにも、

CAI類の単語:

cu'i (どちらでもない)

ru'e (弱い気持ち)

sai (強い気持ち)

cai (極度に強い気持ち)

があります。 これを使うと

.i'ocai (強烈に褒める気持ち)

.i'osai (非常に褒める気持ち)

.i'oru'e (ちょっと褒める気持ち)

.i'ocu'i (「褒める」でも「羨む」でもない、どちらとも言えない気持ち)

.i'onairu'e (ちょっと羨む気持ち)

.i'onaisai (非常に羨む気持ち)

.i'onaicai (強烈に羨む気持ち)

というように、段階を付けて気持ちを表現することができます。