代項というものについて、前回少しお話ししましたが、以前言った項をもう一度使いたいとき、その項をもう一度言う代わりに、代項を使うことができます。 こういう用途の代項は、KOhA4類として分類されているのですが、そのうちの10個の単語
ko'a ko'e ko'i ko'o ko'u fo'a fo'e fo'i fo'o fo'u
は、あらかじめ特定の項を代入することによって、誤解されること無く特定の項を指すことができるようになる代項です。 どういうことか、1つ例を挙げてみましょう。
lo zipcpi goi ko'a cadzu lo bisli .i za'a ko'a ru'inai sakli
この表現には、 {.i} が1つだけあります。ですから、これは2つの文で構成されています。 最初の文は
lo zipcpi goi ko'a cadzu lo bisli
この文は命題になっています。
述語: cadzu 「歩く」(内容語単語)
項: lo zipcpi goi ko'a 「ペンギンが」 lo bisli 「氷の上を」
全体として「ペンギンが氷の上を歩く」という命題になります。
この「ペンギン」の項 {lo zipcpi goi ko'a} は、やけに長いですね。 実は、これは {lo zipcpi} 「ペンギン」という項を {ko'a} という代項に代入している表現なのです。
項を代項に代入するには、その項と代項の間に {goi} という機能語を入れます。 項と代項の順番は逆でも構いません。
lo zipcpi goi ko'a
あるいは
ko'a goi lo zipcpi ku
これで、 {lo zipcpi} という項を {ko'a} という代項に代入したことになります。 {lo zipcpi ku} の直後に {goi} が来る場合は {ku} を省略しても構いません。 「{goi} が付くのは項である」ということがわかっているからです。
このように代入しておいて、この後の文章の中で {ko'a} を使えば、それは {lo zipcpi} を指しているということが誤解なく伝わります。
{.i} の後に出てきた文は
za'a ko'a ru'inai sakli
でしたね。この文も命題です。
za'a 「話し手が観察している」(UI類の単語)
述語: ru'inai sakli (ru'inai 「ときどき」(述語のタグ)、 sakli 「滑る」(内容語単語))
項: ko'a 「それが」({lo zipcpi} という項を代入した代項)
「見ていると、それがときどき滑る」という意味になっています。 {goi} による代入は、同じ代項に別の項を代入するか、代入を解除する機能語を使わない限り、いつまでも有効です。
代入を解除する機能語には、解除専用の機能語 {da'o} のほか、新しい段落を始める機能語 {ni'o} や、以前の段落の続きに戻る機能語 {no'i} があります。 {no'i} の場合は、以前の段落での代入が再度有効になります。