命題を内容語に変える

Youtube : 第8回、 11分29秒から

次は、1つの命題全体を1つの内容語に変える、NU類という品詞に属する単語について、考えてみましょう。

NU類は、その後に続く命題から、こと、動作、性質、数量、概念、状態など、抽象的なものごとを取り出して内容語にします。 例えば

nu jukpa lo cinki kei

という表現を考えましょう。 この最初に出てくる {nu} は、「こと」という意味の内容語を作ります。 {nu} で作られる内容語の定義では、「{nu} の後に続く命題であらわされること」という項の役割が、1番めの項に与えられます。

この表現の最後に付いている {kei} というのは、「NU類の単語が掛かっている命題の範囲はここまでだ」というしるしになる単語です。 つまり、NU類とkeiで1つの命題を挟むことによって、1つの内容語を作っているわけです。 この {kei} は、NU類が掛かっている命題の区切りが明らかである場合には、省略しても構いません。

この例文で、 {nu} と {kei} に挟まれている命題は {jukpa} 「料理する」という述語と、 {lo cinki} 「昆虫を」という項で構成されています。 {jukpa lo cinki} 「昆虫を料理する」ということです。 これが {nu} と {kei} に挟まれると、命題全体が1つの内容語に変わって、「昆虫を料理すること」つまり「昆虫料理」ということを意味する表現になります(ことがらをあらわしているだけで、「料理の結果としてできたもの」をあらわしてはいません)。

NU類の別の例も考えてみましょう。 NU類に属する {ka} という単語は、その後に続く命題から、性質を取り出して内容語にします。

ka prami ce'u kei 「愛される性質」

この表現は、 {ka} によって作られる1つの内容語となっています。 この内容語の定義では、「{ka} の後に続く命題であらわされる性質」という項の役割が、1番めの項に与えられます。

この {ka} の後に続く命題は {prami ce'u} という部分です。 この部分の命題の述語は {prami} 「愛する」、項は1つだけで、 {ce'u} です。 この項は述語 {prami} の後に出てきますから、 {prami} の定義で決められる2番めの項の役割である「愛する対象」つまり「愛されるもの」という役割を担います。 {ce'u} という項は、これ自体には特定の意味がないのですが、 NU類の単語が付いた命題の中で、注目したい項の役割を担うところに出てきます。 例えば、 「愛される性質」という内容語を作りたいときは、「愛されるもの」つまり {prami} の2番めの項の役割に注目したいので、 その場所に {ce'u} を置いて {ka prami ce'u kei} とするわけです。