第5回 te sumti : 項の場所

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項の役割を決める条件
発音 : m n

項の役割を決める条件

Youtube : 第5回、 最初から

1つの命題の中での「項の役割」を決める条件というのは、2種類あります。

  1. 項のタグ(項の役割を決める言葉、 {sumtcita})が項の直前に付いている場合には、そのタグによって、項の役割が決まる

  2. 項のタグが付いていない場合には、 使われている述語と、項が出てくる順番との組み合わせ によって、項の役割が決まる

この1つめの条件である「項のタグ」については、次回、詳しくお話する予定です。 今回は、2つめの条件について、詳しく考えてみましょう。

まず、例として

bu'u lo ckule ku do lo pendo ku lo mlatu ku tavla

という命題を取り挙げてみましょう。 この命題は、全体として「学校であなたが友達に猫について語る」 という意味になります。

この命題の述語は、

tavla 「語る」

です。 {bu'u lo ckule ku do lo pendo ku lo mlatu ku} という部分は、 4つの項から成り立っています。

bu'u lo ckule ku 「学校で」

do 「あなたが」

lo pendo ku 「友達に」

lo mlatu ku 「猫について」

この4つの項のうち {lo ckule ku} (学校)という項には、 {bu'u} という、場所をあらわすための項のタグが付いています。 ですから、この項については、項が出てくる順番に関係なく、このタグによって「項の役割」が決まり、「学校」という意味になります。

その後の3つの項、 {do} と {lo pendo ku} と {lo mlatu ku} には、項のタグが付いていません。 こういう場合には、「使われている述語と、項が出てくる順番との組み合わせ」という条件によって「項の役割」が決まります。 今取り上げている例では、 {tavla} 「語る」という述語が使われていますから、 このタグ無しの3つの項については「述語 {tavla} の定義と、この3つの項が出てくる順番」によって、それぞれの「項の役割」が決まります。

タグ無しの3つの項のうち、1番めに出てきたのは {do} (あなた)という項でしたね。 「1番めに出てくる項が「語る主体」という役割を担う」ということは、 この命題の述語である {tavla} の定義として決められています。 ですから、この {do} は 「語る主体」という役割を担うことになります。 こうして、この命題の do は、「あなた」という意味になります。

同じように、 2番めの項の役割は「語る対象」で、3番目の項の役割は「語る主題」であるということが、 {tavla} の定義として決められています。 これによって、タグ無しの2番めの項 {lo pendo ku} (友達)は「友達」という意味になり、タグ無しの3番めの項 {lo mlatu ku} (猫)は「猫について」という意味になります。

こうして、この命題は全体として「学校であなたが友達に猫について語る」という意味になります。

タグ無しの項 {do} {lo pendo ku} {lo mlatu ku} の順番が同じであれば、{bu'u} というタグが付いた項 {bu'u lo ckule ku} が最後にあっても、あるいは、ほかの項の間にあっても、命題全体の意味は変わりません。

また、タグ無しの項の順番が同じであれば、述語 {tavla} が項と項の間にあっても、命題全体の意味は変わりません。 例えば、上記の命題の代わりに

do lo pendo ku tavla bu'u lo ckule ku lo mlatu ku

と言っても、3つのタグ無しの項 {do} {lo pendo ku} {lo mlatu ku} が出てくる順番は同じですから、同じ意味の命題になります。

1つ注意しなければならないのは、「述語が全てのタグ無しの項より先に出てくると、デフォルトでは、1番目の項が省略されているものとみなされる」ということです。 ですから、

bu'u lo ckule ku tavla do lo pendo ku lo mlatu ku

と言ってしまうと、 1番目の項、つまり「「語る主体」という役割を担う項」が省略されているとみなされます。 そして、述語 {tavla} の後に出てくる最初の項 {do} は、 「述語 {tavla} で定義される2番めの項」とみなされ、「語る対象」という役割を担うことになります。 「あなたに語る」ということになりますね。 {do} の次に出てくる項 {lo pendo ku} は、 「述語 {tavla} で定義される3番めの項」つまり「語る主題」という役割を担うことになります。 「友達について語る」ということです。

この述語に使われている {tavla} という単語については、 実は4番目の項の役割も定義されていまして、 4番目の項は「語る言語」という役割を担います。 そうすると {lo mlatu ku} は、この命題の中では「語る言語」という役割を持ちますから、「猫という言語で語る」というような、よくわからない意味になります。

こうして、この命題は全体として 「あなたに友達について猫という言語で語る」という意味になります。

さて、 もとの命題 {bu'u lo ckule ku do lo pendo ku lo mlatu ku tavla} では、「語る主体」としての {do} 、「語る対象」としての {lo pendo ku} 、「語る主題」としての {lo mlatu ku} を明言しているのですが、 このうちのいくつかの項を言わずに済ませたいこともありますね。 でも、こういったタグ無しの項の役割は順番によって決まっているので、 単に項を消すだけだと、後から出てくる項の順番がずれてしまいます。 例えば、2番めの項である「語る対象」としての {lo pendo ku} を消して

bu'u lo ckule ku do lo mlatu ku tavla

と言ってしまうと、タグ無しの項の3番目にあった {lo mlatu ku} の順番が、2番目に繰り上がって、「語る主題」ではなくて「語る対象」と見なされてしまいます。 「猫に語る」ということです。

こうならないように、 消す項の代わりに {zo'e} という「不特定のものごと」を指す項を入れて、順番が狂うのを防ぐことができます。 今の命題でこの方法を使うと

bu'u lo ckule ku do zo'e lo mlatu ku tavla

「学校であなたが猫について語る」と言うことができます。 {zo'e} の意味を日本語に訳す必要はありませんが、わざわざ訳すとしたら、「なにか」とか「だれか」などと訳せます。 そうすると、この命題は全体として「学校であなたがだれかに猫について語る」と訳せます。