発音 : . ' y ,

Youtube : 第4回、 9分41秒から

今回は、「音素の列の区切り方」について考えましょう。 以下の2つの場合には、単語と単語の間の区切りとして、 {.} つまり「音のない瞬間」という音素を入れる必要があります。

  1. 母音で始まる単語の前

  2. 名前専用の単語の前後

これ以外の単語と単語の間は、 {.} で区切っても区切らなくても、どちらでも構いません。

{.} という音素は、単語と単語の間を区切るためだけに使われます。 ですから、1つの単語の途中には、 {.} を入れてはいけません。 でも、ロジバンでは、音素の並び方の規則に従うようにするために、1つの単語の内部で、2つの母音の間や、2つの子音の間を、区切る必要が出てくる場合があります。 そこで、1つの単語の内部で区切りに使うための音素が、2種類用意されています。

'[h] [θ] ... (無声摩擦音でロジバンで他に使われていないものが、異音として許される)母音の間の区切り
y[ə] [ɵ / ɞ]子音の間の区切り

まず、母音の間の区切り、 {'} (アポストロフィ)ですが、これは、単語の最初や最後には出てきません。 必ず、単語の途中で、2つの母音の間だけで使われます。 この音素の発音として、一般的には 日本語の「はへほ」の子音と同じ音が使われます。 ただし、異音として、[θ]などの無声摩擦音も許されています。

{'} を含む単語を発音してみましょう。

ki'e (ありがとう:COI類)

さて、次は、子音の間の区切りに使われる音素 {y} ですが、 この発音は、第1回で練習した5つの母音のどれでもない母音になります。 口の開き具合と、舌の位置については、 {o} と {e} の中間あたりになります。 唇の形については、異音として、唇に力を入れない発音 [ə] から、唇に少し力を入れて丸める発音 [ɵ / ɞ] までの範囲が許されています。

では、 {y} を含む単語を発音してみましょう。

jesymabru (ハリネズミ)

この区切りの音素 {y} は、他の5つの母音の中間的な音になりますが、 特別弱く発音してはいけません。 他の母音と同じ程度の強さで発音してください。 どうしてかというと、ロジバンでは、連続する子音の発音が苦手な話し手のために、 そういう子音の間に、弱くて曖昧な母音を入れることを許しているからです。 こういう母音を「緩衝音」というのですが、 緩衝音を入れるところは、ロジバンの音素の並び方の規則としては区切らない場所ですから、 区切りの音素 {y} と、ただの緩衝音とを、はっきり区別して発音する必要があるのです。 この区別を曖昧にして発音すると、単語の区切りを間違えられる恐れがあります。

例えば、先ほどの {jesymabru} の区切りの音素 {y} を弱く発音してしまうと、 {s} と {m} の間を区切っていることがわかりません。 そうすると、ロジバンの音素の並び方の規則から、 {je} という単語と {smabru} という単語に分かれていると見なされて、

je smabru (そして静かなブラシ)

という意味になってしまいます。 ですから、区切りの y は、緩衝音と間違えられないように、はっきりと発音しましょう。

{y} という音素は、区切り以外の用途で使うこともあります。 例えば、記号としての b という字を指す {by} という単語がありますが、この単語では、子音の間の区切りと同じ音素 {y} が、最後にあります。 また、名前専用の単語を作るときに、この {y} という音素や、この音素を含む二重母音 {iy} とか {uy} いう音素列を使っても構いません。

ところでロジバンでは、アクセントと、音素列の並び方の規則によって、単語の区切りや単語の種類を判断します。 その判断のために、1つの単語の中の母音や子音の個数を数えることがありますが、この際に、母音の間の区切りの {'} と、子音の間の区切りの {y} は、子音や母音としてカウントされません。 {'} や {y} という音素は、発音上は子音と母音ですが、単語の形を区別する上では、あくまでも区切りであって、子音や母音とは見なされません。

それから、ロジバンを音声であらわすときには関係ないことですが、 文字であらわすときだけ注意するべきことがあります。 ロジバンでは外来語の中で、2つの母音の、二重母音にならない連続、 例えば {u} {o} 、 {a} {i} などの音素列を使うことが許されているのですが、 これをASCII文字列であらわすときは、 そのまま {uo} 、 {ai} と文字を並べただけでは、二重母音と見なされてしまって [wo]、 [aj] と読まれてしまいますから、もとの音素列が正しく再現できません。 そこで、こういう音素の列をASCII文字列であらわすときは、二重母音にならないように、 {u,o} 、 {a,i} のように、 {,} (コンマ) の記号で区切る習慣があります。