第4回 bridi : 命題

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命題って何?
発音 : . ' y ,

命題って何?

Youtube : 第4回、 最初から

「文として文法的に許される表現の1つに、命題というものがある」ということを第2回でお話ししました。 命題とは、ものごとの関係をあらわす文です。 「ものごとの関係をあらわす」というのは、どういうことなのか、例を挙げて、考えてみましょう。

mi'a ca lo bavlamdei fi lo trene ku pamli'u

これはロジバンの1つの命題で、「わたしたちは、あした、列車に乗って、デートする」という意味になります。

このような命題というのは、

  1. 「ものごと」をあらわす部分

  2. 「ものごと」の間の「関係」をあらわす部分

という2種類の要素から構成されています。

ここで「ものごと」と言っているのは非常に広い意味で、人でも良いですし、他の生物でも、無生物でも、場所や時でも、出来事でも、性質でも、抽象的なものでも、架空のものでも、何でも構いません。 上記の例文は、「ものごと」をあらわす部分3つと「関係」をあらわす部分1つで構成されている命題です。 この命題をちょっと分解してみましょう。

この命題の中で「ものごと」をあらわす部分は {mi'a ca lo bavlamdei fi lo trene ku} という部分です。 これはさらに細かい3つの部分、 {mi'a} と {ca lo bavlamdei} と {fi lo trene ku} に分けることができます。 この3つの部分はそれぞれ「ものごと」をあらわしています。

mi'a 「聞き手以外のだれかと、わたし(が)」という「ものごと」

ca lo bavlamdei 「あした(の時に)」という「ものごと」

fi lo trene ku 「列車(に乗って)」という「ものごと」

そして、 この {mi'a ca lo bavlamdei fi lo trene ku} の後に出てくる {pamli'u} という部分は、3つの「ものごと」の間の、「デート」という概念を通した「関係」をあらわしています。

pamli'u 「デート」という「関係」

ちょっと難しいかもしれませんが、 「デート」という概念に、どんなものごとが関わってくるか、考えてみましょう。

まず、「恋愛関係にある者たち」あるいは「今後、恋愛関係になることが期待される者たち」という「デートの主体」が関わっていそうですね。 さらに、「いつデートするか」という「デートの日程」も関係ありそうです。 そしてまた、どこかに移動しながらデートするでしょうから、「デートの交通手段」というものも関係するでしょう。 他にも、「デートの移動ルート」とか、「デート中の気持ち」とか、「デート中の天気」とか、「デート中に起こった事件」とか、「デート前の準備」とか、「デート後の感想」とか、いろんな「ものごと」が、「デート」という概念を通して、互いに関係付けられそうです。

ただ、「デート」という概念を通して互いに関わる「ものごと」を全て言い尽くすのは到底無理そうですし、また、その必要もありません。 話し手は、「デート」という概念を中心にして1つの命題を発言するときに、自分で関係付けたい「ものごと」だけを選んで発言します。

このようにして、ロジバンでは、すべての命題を「ものごとの間の関係」として表現します。 そして、命題の表現の中で「関係」をあらわす部分を、述語(じゅつご、{selbri})と呼びます。 これは、論理学で言う「述語論理」の述語に相当するものです。

述語が関係づけている「ものごと」の方にも特別な呼び名がありまして、これは、(こう、{sumti})と呼びます。

先ほどの例文では、 {pamli'u} 「デート」という部分 が述語です。 そして、 {mi'a}, {ca lo bavlamdei}, {fi lo trene ku} という部分が、それぞれ1つの項となっています。

注記

正確に言えば、 {ca lo bavlamdei} と {fi lo trene ku} は「項に項のタグが付いたもの」ですが、項のタグについては第6回で詳しくお話しします。

このように、述語1つと項をいくつか並べたものが1つの命題となります。 1つの命題の中に、項の数は何個でもあり得ます。 100個でもいいですし、0個でも構いません。 つまり、項を1つも付けなくても、述語が1つあれば命題と見なされます。

「1つの命題の中での各項の関係づけられ方」つまり「各項が命題の中で担っている役割」というものを、この講座では項の役割と呼ぶことにします。 例えば、上記の例文について言えば、

mi'a 「デートの主体」 (わたしたちは)

ca lo bavlamdei 「デートの日程」(あした)

fi lo trene ku 「デートの交通手段」(列車に乗って)

という項の役割を、それぞれ担っていました。 1つの命題の中での項の役割はどうやって決まるのか、つまり「項の役割を決める条件」については、次回以降に詳しく考えてみましょう。